山口市のビジネスの特徴をデータを分析してみよう

こんにちは、デジタルボーイです。山口市のビジネスの特徴について、経済センサスという国の統計データをもとに分析してみました。

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データ出典

山口市の産業別付加価値額と全国とのギャップ

次は、A~Rの産業におけるそれぞれの付加価値額(稼ぐ力)について、構成比を全国、山口県、山口市で計算し、比較したデータです。ちなみに、付加価値額はGDPに近い数値であり、「稼ぐ力」と思ってもらっていいです。

産業分類全国山口県山口市全国gap県内gap
AB_農林漁業0.4%0.3%0.4%0.0%+0.1%
C_鉱業,採石業,砂利採取業0.1%0.1%0.1%0.0%0.0%
D_建設業7.0%9.4%10.0%+3.0%+0.6%
E_製造業16.4%29.0%11.5%-4.9%-17.5%
F_電気・ガス・熱供給・水道業1.1%1.3%1.3%+0.2%0.0%
G_情報通信業6.0%1.2%3.4%-2.6%+2.2%
H_運輸業,郵便業3.8%5.3%5.3%+1.5%0.0%
I_卸売業,小売業16.2%15.9%23.1%+6.9%+7.2%
J_金融業,保険業5.4%4.6%4.0%-1.4%-0.6%
K_不動産業,物品賃貸業3.6%1.9%2.7%-0.9%+0.8%
L_学術研究,専門・技術サービス業6.6%3.6%5.7%-0.9%+2.1%
M_宿泊業,飲食サービス業2.0%2.2%1.2%-0.8%-1.0%
N_生活関連サービス業,娯楽業1.5%1.8%1.8%+0.3%0.0%
O_教育,学習支援業2.1%2.0%3.3%+1.2%+1.3%
P_医療,福祉21.6%15.4%18.5%-3.1%+3.1%
Q_複合サービス事業0.7%1.0%1.0%+0.3%0.0%
R_サービス業(他に分類されないもの)5.5%5.1%6.7%+1.2%+1.6%

全国とのギャップ、山口県とのギャップがそれぞれ絶対値で2以上の産業に色をつけています。

全国から見た、山口市の産業の特徴

全国の産業構成比とギャップの大きな産業は以下の通り。

全国より比率の高い産業は

  • 建設業
  • 卸売業・小売業

全国より比率の低い産業は

  • 製造業
  • 情報通信業
  • 医療、福祉

山口県から見た、山口市の産業の特徴

また、山口県の産業構成比とギャップの大きな産業は以下の通り。

山口県より比率の高い産業は

  • 情報通信業
  • 卸売業・小売業
  • 学術研究,専門・技術サービス業
  • 医療、福祉

山口県より比率の低い産業は

  • 製造業

データから見えてきた、山口市の産業の特徴

以上のように山口市の産業構成比について、全国と山口県内で比較してみました。これらのデータ分析から見えてきた、山口市の産業の特徴についてまとめてみましょう!

全国との比較

山口市は、全国平均と比べて以下の産業が高い比率を占めていました。

  • 建設業(全国平均7.0%に対し10.0%):地域のインフラ整備や建設需要が全国水準より高いことが示唆されます。
  • 卸売業・小売業(全国平均16.2%に対し23.1%):山口市は商業活動が盛んで、流通業の役割も大きいと考えられます。

一方で、以下の産業は全国平均より低い比率を示していました。

  • 製造業(全国平均16.4%に対し11.5%):全国的な製造業の割合に比べて低く、製造業が地域経済の主要な柱ではないことが分かります。
  • 情報通信業(全国平均6.0%に対し3.4%):デジタル関連産業の割合が全国水準に達していない点が課題と言えます。
  • 医療・福祉(全国平均21.6%に対し18.5%):全国水準よりやや低いものの、依然として大きな割合を占めています。

山口県との比較

山口市は、山口県全体と比べて以下の産業が高い比率を示していました。

  • 情報通信業(県平均1.2%に対し3.4%):県内においてデジタル関連産業が比較的進んでいるエリアであることが伺えます。
  • 卸売業・小売業(県平均15.9%に対し23.1%):県内の中でも商業の集積度が高く、流通業が重要な役割を果たしていると考えられます。
  • 学術研究・専門技術サービス業(県平均3.6%に対し5.7%):高度な専門技術サービスや研究活動が一定の割合で行われていることを示しています。
  • 医療・福祉(県平均15.4%に対し18.5%):県平均を上回り、地域の医療・福祉への需要が高いことが示されています。

一方で、以下の産業は山口県平均より低い比率を示しています:

  • 製造業(県平均29.0%に対し11.5%):山口県全体では製造業が主要産業の1つであるのに対し、山口市ではその割合が大幅に低く、他産業が経済の中心であることが分かります。

まとめ

以上より山口市の産業の特徴として、特に注目すべきは、山口県が全国的にも「製造業の県」として知られているにもかかわらず、県庁所在地である山口市の製造業の割合が非常に低い点です。山口市では製造業が11.5%と、全国平均の16.4%だけでなく、山口県全体の平均である29.0%をも大幅に下回っていました。

製造業が少ない理由と背景

  1. 行政都市としての特徴
    山口市には山口県庁および山口市役所が所在しており、これに伴って公務員の人口比率が全国平均よりも高くなっています。山口市の経済活動の一部が行政機能に依存していることから、工業中心ではなく、サービス業や行政関連の産業構成が強調されています。
  2. 山口県内の製造業の地域分布
    山口県内の製造業は、周南市や防府市、宇部市など、工業地域として発展してきたエリアに集中しています。これらの地域は、製造業を支える工場やインフラが整備されており、大規模な企業や産業クラスターを形成しています。一方、山口市は行政都市としての性格が強いため、製造業が発展するための環境が他地域に比べて不足しているのでしょう。
  3. 産業政策と地域特性の違い
    山口市は、山口大学、山口県立大学など、歴史的に教育や文化の中心地としても機能しており、産業政策においても他の県内工業都市とは異なる方向性が取られてきた可能性があります。その結果、製造業よりも公共サービス、教育、医療・福祉、流通業が経済の中心となっています。

山口市の経済的特徴と可能性

  • 高い行政依存度
    公務員の割合が高いことは、安定的な経済基盤を提供している一方で、製造業やその他の産業の育成において制約となる可能性があります。行政関連の需要に依存しすぎると、地域経済の多様性が低下するリスクもあります。
  • 流通業やサービス業の強さ
    山口市では、卸売業・小売業の割合が県内外で突出して高い(23.1%)。これは商業やサービス業が地域の雇用や経済を支えていることを示しています。また、学術研究や専門技術サービス業の割合も高く、教育や知識集約型産業の発展が期待されます。
  • 産業転換の余地
    製造業の割合が低いことは弱点である一方、情報通信業(3.4%)や学術研究・専門技術サービス業(5.7%)といった分野でのポテンシャルがあります。これらの分野は、全国的にも成長が期待されるため、今後の地域発展の軸となり得ます。

今後の展望

山口市が製造業において山口県全体の特徴から外れている点は、弱点とも言えますが、地域の多様性を高める機会とも捉えることができます。以下のような施策が考えられます:

  • 製造業の誘致ではなく、知識集約型産業の推進
    地元の高い教育水準や学術研究機関を活かし、情報通信業や技術サービス業を育成し、地域の産業構造を高度化する。
  • 流通業・サービス業をさらに活性化
    山口市の商業的な強みをさらに活かし、地域内外への観光客や消費者を取り込む施策を拡充する。
  • 製造業との連携強化
    周辺の製造業が盛んな地域と連携を深め、サプライチェーンの中核的な役割を担う可能性を探る。

このように、山口市は製造業の低比率を課題としつつも、行政都市や商業都市としての強みを活かし、サービス業や知識集約型産業の拠点として発展する可能性を持っています。

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