こんにちは、デジタルボーイです。山口市の企業の数と種類について、経済センサスという国の統計データをもとに分析してみました。
データ出典
- データ元
- 2019年経済センサス
- 2021年経済センサス
- url:https://www.stat.go.jp/data/e-census/index.html
全国や山口県と比較した、山口市の企業の種類の特徴は?
次は、A~Rの産業における事業所数について、構成比を全国、山口県、山口市で計算し、比較したデータです。
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index | 全国 | 山口県 | 山口市 | 全国gap | 県内gap |
---|---|---|---|---|---|
A農業,林業 | 1.47% | 2.77% | 5.39% | +3.92 | +2.62 |
B漁業 | 0.1% | 0.18% | 0.0% | -0.1 | -0.18 |
C鉱業,採石業,砂利採取業 | 0.03% | 0.02% | 0.0% | -0.03 | -0.02 |
D建設業 | 10.68% | 14.26% | 10.94% | +0.26 | -3.32 |
E製造業 | 4.33% | 3.29% | 1.18% | -3.15 | -2.11 |
F電気・ガス・熱供給・水道業 | 0.6% | 0.78% | 1.52% | +0.92 | +0.73 |
G情報通信業 | 4.28% | 1.7% | 3.03% | -1.24 | +1.33 |
H運輸業,郵便業 | 2.19% | 1.74% | 1.52% | -0.68 | -0.23 |
I卸売業,小売業 | 17.3% | 16.59% | 16.5% | -0.8 | -0.09 |
J金融業,保険業 | 1.67% | 1.72% | 2.53% | +0.85 | +0.8 |
K不動産業,物品賃貸業 | 13.51% | 11.47% | 11.62% | -1.9 | +0.15 |
L学術研究,専門・技術サービス業 | 9.56% | 6.55% | 6.23% | -3.33 | -0.32 |
M宿泊業,飲食サービス業 | 7.26% | 7.94% | 5.05% | -2.21 | -2.89 |
N生活関連サービス業,娯楽業 | 5.3% | 7.09% | 7.74% | +2.44 | +0.66 |
O教育,学習支援業 | 3.21% | 2.84% | 2.02% | -1.19 | -0.82 |
P医療,福祉 | 7.49% | 8.14% | 6.4% | -1.09 | -1.74 |
Q複合サービス事業 | 0.09% | 0.58% | 0.67% | +0.58 | +0.09 |
Rサービス業(他に分類されないもの) | 10.93% | 12.34% | 17.68% | +6.75 | +5.34 |
全国とのギャップ、山口県とのギャップがそれぞれ絶対値で2以上の産業に色をつけています。
全国から見た、山口市の企業の種類の特徴
全国の企業の種類の構成比とギャップの大きな産業は以下の通り。
全国より比率の高い産業は
- 農業、林業
- 生活関連サービス、娯楽業
- サービス業
全国より比率の低い産業は
- 製造業
- 学術研究、専門・技術サービス業
- 宿泊業,飲食サービス業
山口県から見た、山口市の企業の種類の特徴
また、山口県の企業の種類の構成比とギャップの大きな産業は以下の通り。
山口県より比率の高い産業は
- 農業、林業
- サービス業
山口県より比率の低い産業は
- 建設業
- 製造業
- 宿泊業
データから見えてきた、山口市の企業の種類の特徴
以上のように山口市の企業の種類について、全国と山口県内で比較してみました。これらのデータ分析から見えてきた、山口市の企業の種類の特徴についてまとめてみましょう!
全国との比較
全国と比較すると、山口市の事業所構成比には以下のような特徴が見られます。
- 比率が高い産業
山口市では「農業、林業」「生活関連サービス業、娯楽業」「サービス業(他に分類されないもの)」の比率が全国平均を大きく上回っています。特に「農業、林業」は全国平均の3倍以上の構成比を示しており、農村部や自然環境を活用した産業が活発であることが伺えます。また、「サービス業(他に分類されないもの)」は全国平均を6.75ポイントも上回り、多様なサービス産業が展開されている可能性があります。 - 比率が低い産業
一方で、「製造業」「学術研究、専門・技術サービス業」「宿泊業、飲食サービス業」の比率が全国平均を下回っています。「製造業」は特に全国平均よりも3.15ポイント低く、工業や工場生産の規模が他地域に比べて小さいことを示唆しています。また、「学術研究、専門・技術サービス業」の比率が低いことから、先端技術や専門性を持つ業種の集中度が比較的低いことが分かります。
山口県との比較
山口県全体と比較しても、山口市の事業所構成比には独自の特徴が見られます。
- 比率が高い産業
山口市は「農業、林業」と「サービス業(他に分類されないもの)」の比率が山口県全体を上回っています。「農業、林業」の比率が高いのは、山口市が県内でも特に農業・林業活動が盛んなエリアであることを示しています。また、「サービス業(他に分類されないもの)」が山口県全体と比べて5.34ポイント高い点は、山口市の中心都市として多様なサービス事業が集中していることを反映しています。 - 比率が低い産業
「建設業」「製造業」「宿泊業、飲食サービス業」は山口県全体の平均比率を下回っています。「建設業」は県平均よりも3.32ポイント低く、公共事業や建設関連の活動が山口市では相対的に抑制されている可能性があります。「宿泊業、飲食サービス業」の比率も低いことから、観光業の規模が県内他地域と比較してやや小さいことが窺えます。
山口市における農林漁業の生産性について
山口市では農林漁業の事業所数が全国平均よりも高い比率を示していますが、付加価値額ベースでみると全国平均とほぼ同水準の0.4%にとどまっています。このことは、山口市の農林漁業が事業所数の多さに反して生産性が低い、つまり稼ぐ力が弱いことを示しています。小規模経営や副業的な農林漁業が多い可能性や、収益性の高い商品やサービスを提供できていないことが背景にあると考えられます。この点を改善するには、高付加価値型の農林漁業や観光資源との連携を進めるなど、事業の競争力強化が課題となります。
山口市における宿泊業,飲食サービス業について
湯田温泉は山口市の観光地として地域住民にとって誇りとされるブランドですが、データ上では宿泊業や飲食サービス業の事業所数が全国平均や山口県平均を下回っています。さらに、付加価値額の構成比も低いことから、山口市の観光産業の経済的な寄与が限定的であることが示されています。これは、湯田温泉の魅力が地域内では認識されていても、広域的な集客力や観光資源としての競争力が十分でないことを示唆します。また、観光業の経済波及効果が地元産業全体に十分に広がっていない可能性も考えられます。
観光業の競争力を強化するためには、湯田温泉を核とした観光資源の磨き上げやマーケティング、地域の飲食業との連携を進める必要があります。さらに、観光業の収益性向上のため、付加価値の高いサービスの提供や観光客の滞在期間延長を目指した施策も重要です。
公務員の町である山口市から派生した産業
山口市は、公務員の人口比率が高く、行政機能が地域の中心的役割を担っています。このことから、安定した公務員の需要を背景に「生活関連サービス業,娯楽業」や「サービス業(他に分類されないもの)」が発展していると考えられます。これらの産業は、地域住民の日常的な需要に支えられる性質が強く、公務員家庭をはじめとした安定した消費活動が業種の成長を促している可能性があります。
特に、生活関連サービス業や娯楽業が全国平均や山口県平均を上回る比率を示していることは、地域住民向けのサービスが重要な位置を占めていることを示しています。このような産業は、公務員の安定的な収入やライフスタイルに依存する側面があるため、地域経済の安定性に寄与する一方で、大きな成長や変革が求められる場面では脆弱性が生じる可能性があります。
山口市の事業所構成の全体的な傾向と特徴
山口市の事業所構成には、地域の自然環境や都市的機能が反映されています。特に、全国や県内と比較して農業・林業やサービス業(特に分類されないもの)が高い比率を占めていることは、山口市が自然資源を活用した産業や多様な都市型サービス事業に依存していることを示しています。一方で、製造業や宿泊業などの比率が低いことから、工業生産や観光産業の規模は全国や県内平均に比べて小さい傾向にあります。
総じて、山口市は農業・林業を中心とした一次産業と、都市型のサービス産業が組み合わさった産業構造を持ちながら、製造業や観光産業における課題を抱える地域であるといえます。これは、地域の自然資源や都市機能を活用する一方で、外部からの投資や観光客誘致が相対的に少ないことが背景にあると考えられます。
山口市の産業構成は、農林漁業や公務員を基盤とした生活関連サービス業が目立つ一方で、宿泊業や製造業などの競争力が相対的に低いという特徴を持っています。これを踏まえると、農林漁業の生産性向上や観光業の収益性強化とともに、行政機能に依存しない多様な産業育成が必要です。また、公務員の町という特性を活かして、地域の安定性を基盤にしつつ、付加価値の高い産業を新たに創出する取り組みが求められるでしょう。