人事データの活用とデータ分析事例

こんにちは、デジタルボーイです。今回は人事データの活用とデータサイエンス応用例について解説したいと思います!

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デジタルボーイです。
データサイエンス歴20年以上のおっさんです。中小企業診断士として、データサイエンス、WEBマーケティング、SEOに関するデータ分析、コンサルティングの仕事をしています。自己紹介の詳細はコチラ

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人事データの活用とデータサイエンス

コンサルをやってて思うんですが、会社を経営するにあたって、近年、ますます、従業員の管理が重要になってきていると感じます。ひと昔に比べて、求人を出しても全然、人が応募してもらえず、多くの企業で人手不足が問題になっています。また、最低賃金の上昇や給与の上昇によって、経営コストに占める人件費もひと昔前に比べて上昇している傾向があります。だからこそ、優秀な社員はできるだけ長く社内にいてもらいたいというのが経営陣の切実な思いですよね。

こんな重要な部門である人事ですが、経営の中で最もデータ活用が遅れている分野でもあると思います。マーケティング、経営計画、製造管理などではしっかりとデータドリブンな意思決定をしている会社でも、人事はいまだに経験と勘という会社はたくさんあります。

とはいえ、人事データの活用はいろんな場面で実行できます!例えば、経験や勘だけに頼るのではない、従業員の成果を上げ、適材適所の配置を行うためのデータ分析も、もちろん可能です。特に、離職率の低減や採用の最適化、従業員のエンゲージメント向上といった課題に対して、データ活用は効果を発揮します。

データ分析コンサルの立場で言えば、人事データをいきなり高度な分析にかけなくとも、データの見える化をするだけでも、人事の質を高めデータドリブン人事を実行するのに、めちゃめちゃ進むと思っています。なので、今回は高度な分析というよりも、見える化、グラフ化、可視化という観点で、これまで僕がデータ分析コンサルとして携わってきた人事データの活用について、具体的にみていきたいと思います!

グラフ化による採用プロセスの効率分析

まずは、採用プロセスの効率性の可視化についてみていきましょう。採用活動の成果を上げるためには、どのフェーズでボトルネックが発生しているのかを明確にし、改善につなげることが重要です。そのために有効なのが、応募者数の推移、選考通過率、採用までの平均期間のデータをグラフ化・見える化して、全体の流れを可視化する手法です。

応募者数の推移を可視化する

まず、応募者数の推移を時系列で確認することで、採用市場の動向や自社の求人の魅力度を把握できます。例えば、年度ごとの変動を折れ線グラフで示せば、求人の出し方や経済状況による影響を視覚的に捉えられるでしょう。さらに、月ごとの応募者数を棒グラフで示せば、年間を通じた季節的なトレンドも見えてきます。特定の時期に応募が増減する理由を分析すれば、最適な採用活動のタイミングを見極めることができますよね。

選考通過率の変化を分析する

次に、書類選考や面接の通過率を段階ごとに可視化することも重要です。例えば、応募者のうち何%が書類選考を通過し、面接をクリアし、最終的に採用に至ったのかをフローチャートやファネルチャートで表現すると、どこで多くの候補者が離脱しているのかが一目でわかります。

僕のデータ分析の経験上、面接段階での通過率が極端に低い場合、選考基準が厳しすぎる可能性があります。このような場合、要件を見直し、より現実的な基準を設定することで、優秀な人材を取りこぼさないようにする点がポイントです!また、逆に書類選考を通過しすぎている場合は、選考の質が低下し、面接担当者の負担が増える可能性もあるため、適切なフィルタリングが必要です。

採用までの平均期間を見直す

採用までにかかる平均期間(リードタイム)も、採用の効率性を測る重要な指標です。たとえば、応募から内定までにかかる日数を年度ごとに折れ線グラフで表現すれば、採用プロセスのスピードが改善されているのか、それとも遅れているのかを判断できます。特に、他社との競争が激しい職種では、採用スピードが遅いと優秀な候補者を逃してしまうリスクがありますよね。

データを基に、どのプロセスに時間がかかっているのかを分析すれば、迅速な対応策を打つことができます。例えば、面接の日程調整がボトルネックになっている場合は、候補者に柔軟な選択肢を与えることで短縮できる可能性があります。

採用チャネル別のパフォーマンス比較

最後に、どの採用チャネルが最も効果的かを分析することも欠かせません。例えば、自社の採用サイト、転職エージェント、求人広告、リファラル(社員紹介)など、各チャネルごとの応募者数、通過率、採用決定率を比較することで、コストパフォーマンスの高いチャネルが見えてきます。

一例として、チャネルごとの応募者数を棒グラフで示し、それぞれの選考通過率を折れ線グラフで重ねることで、どのチャネルがより質の高い候補者を提供しているのかが明確になります。もし、求人広告経由の応募者数が多いものの、最終的な採用率が低い場合は、ターゲット層とのミスマッチが起きている可能性があるため、広告の内容や掲載するメディアを見直す必要があるかもしれません。

このように、データをもとに採用プロセスを可視化し、ボトルネックを特定することで、より効果的な人材獲得戦略を立てることができるのです!

従業員の離職予測

続いて、従業員の離職予測についてみていきましょう!企業にとって、優秀な従業員が突然退職することは大きなリスクとなりますよね。特に、中途採用や育成に多額のコストがかかる職種では、離職率の管理が経営課題の一つになりますよね。そこで、人事データを活用し、離職リスクの高い従業員を事前に把握することで、早めの対策が可能になります。

離職予測に使用するデータ

離職を予測するには、過去の従業員データを分析し、どのような要素が影響を与えているのかを明らかにする必要があります。一般的に、以下のデータが有効とされています。

  • 勤続年数: 勤続年数が短い従業員は離職リスクが高く、一定期間を過ぎると安定する傾向があります。
  • 給与水準: 業界平均より低い給与の従業員ほど、転職を検討しやすいと言われています。
  • 残業時間: 過度な残業は、ストレスの増加やワークライフバランスの悪化につながり、離職の要因になります。
  • 満足度調査: 従業員の職場環境や上司への満足度は、離職リスクの指標として重要です。

これらのデータを組み合わせ、離職の可能性を予測するモデルを作成することで、ハイリスクな従業員を特定できるようになります。

離職リスクの可視化

データを分析する際、まずは離職率の傾向を可視化することが重要です。例えば、勤続年数ごとの離職率を折れ線グラフにすると、どの時期に最も離職が多いのかが分かります。一般的には、新入社員の1〜3年目と、昇進やライフイベントが関係する5〜7年目で離職率が高くなる傾向があります。

また、給与水準と離職率の関係を分析する場合、給与レンジごとの離職率を棒グラフで比較することで、特定の範囲に離職が集中しているかを確認できます。特に、業界平均より低い給与帯で離職が多発している場合、適正な昇給の仕組みを導入することで対策が可能になるかもしれません。

予測モデルの活用

過去のデータを基に、機械学習モデルを用いて離職リスクを予測することもできます。例えば、決定木やロジスティック回帰といったモデルを用いると、各要因が離職にどれだけ影響しているのかを数値化できます。特に、特徴量の重要度を確認することで、「どの要因が最も離職に影響を与えているのか」を明らかにすることができます。

僕のデータ分析の経験上、満足度調査の結果が離職予測において非常に強い指標になることが多いです。表面的なデータ(給与や残業)だけでは見えない離職の兆候を、アンケート結果などの定性的データから補足することがポイントです!特に、「職場環境」や「上司との関係」に関する回答がネガティブな場合、離職リスクが高まることがよくあります。

離職リスクに対する対策

モデルが離職リスクの高い従業員を特定できたとしても、最も重要なのは適切な対策を講じることです。たとえば、以下のようなアプローチが考えられます。

  • リスクの高い従業員との定期面談を強化する: キャリアの不安や職場の課題を早めに把握し、離職を未然に防ぐ。
  • 給与や福利厚生の見直し: データから特定された問題点をもとに、待遇の改善を検討する。
  • ワークライフバランスの調整: 残業時間が影響している場合は、業務量の適正化を行う。

このように、データを活用することで、従業員が長く働き続けられる環境を整えることができるのです!

従業員の満足度調査による従業員のグルーピング

続いて、従業員の満足度調査を用いたグルーピングについてです。企業が従業員のエンゲージメントを向上させ、職場環境を改善するためには、満足度調査のデータを活用することが有効です。ただし、単に平均値を求めるだけでは、各従業員がどのような特徴を持つのかまでは把握できません。そこで、教師なし学習の手法を用いて、従業員をいくつかのグループに分けることで、より具体的な施策を立てることができるのです。

満足度調査のデータとは?

満足度調査では、以下のような項目が含まれることが一般的です。

  • 職場環境の満足度(オフィス設備、働きやすさ)
  • 給与や福利厚生への満足度
  • 業務内容の充実度(やりがい、スキルの成長)
  • 人間関係(上司・同僚との関係)
  • ワークライフバランス(残業の多さ、休暇の取りやすさ)

これらのデータを用いて従業員をグルーピングすることで、たとえば「給与には満足しているが、職場環境に不満を持つ層」「仕事のやりがいを感じているが、ワークライフバランスに不満を抱える層」など、具体的な特徴を持つグループを発見できます。

クラスタリングを活用した従業員の分類

教師なし学習の代表的な手法であるクラスタリングを使うことで、従業員の満足度データを基に、類似した回答傾向を持つグループに分類できます。クラスタリングの結果は、視覚的にプロットすることで理解しやすくなります。

たとえば、K-means法を用いると、従業員を事前に指定した「K個」のグループに分類できます。各グループの特徴を分析すれば、「給与満足度が高いがワークライフバランスに課題があるグループ」「人間関係には満足しているが昇給に不満があるグループ」など、具体的な傾向を把握できるのです。

また、階層クラスタリングを使えば、より詳細な分類が可能になります。たとえば、上位3つのグループをさらに細かく分けることで、施策をより精密に立てることができるのですよね。

クラスタごとの特徴を可視化する

データをグルーピングした後は、各クラスタの特徴をグラフ化すると、より直感的に理解できます。例えば、各クラスタの「給与満足度」や「ワークライフバランス」の平均値を棒グラフで比較すると、それぞれのグループの違いが明確になります。また、2次元のプロットを作成し、従業員を散布図で可視化すれば、どのような分布になっているのかを確認できるでしょう。

僕のデータ分析の経験上、クラスタの特徴を把握する際には、単に平均値を見るだけでなく、分布の広がりにも注目することが大切です! たとえば、同じ「ワークライフバランスに不満があるグループ」でも、その中に極端に低いスコアの従業員がいる場合、その個別ケースを詳しく調査することで、より実践的な対策につなげることができます。

従業員グルーピングの活用方法

このように従業員をグルーピングした後は、それぞれの特性に応じた施策を打ち出すことが重要です。

  • 給与や福利厚生への不満が強いグループ → 昇給やボーナス制度の見直し
  • 職場環境への不満が強いグループ → 働きやすいオフィスづくりやリモートワーク制度の強化
  • ワークライフバランスに課題があるグループ → 業務効率化や労働時間の適正化

このように、クラスタリングを活用することで、より具体的で効果的な施策を立案することができるのです!

まとめ

ここまで、人事データを活用した分析手法について解説してきました!データの可視化による採用プロセスの最適化、離職リスクの予測、そして満足度調査を活用した従業員のグルーピングなど、データをもとにした意思決定の重要性が伝わったのではないでしょうか。

企業の成長には、優秀な人材の確保と定着が欠かせません。そのためには、勘や経験だけに頼らず、データを活用した客観的な分析が求められます。特に、適切な指標を設定し、可視化・分析することで、より効果的な施策を打ち出すことができるのです!

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