こんにちは、デジタルボーイです。今回は不動産データの活用とデータサイエンス応用例について解説したいと思います!僕自身、不動産業界のコンサルは結構やっており思い入れの深い業界でもあります。一生懸命、解説してみたいと思います!

デジタルボーイです。
データサイエンス歴20年以上のおっさんです。中小企業診断士として、データサイエンス、WEBマーケティング、SEOに関するデータ分析、コンサルティングの仕事をしています。自己紹介の詳細はコチラ
不動産業界のデータ活用の動向
冒頭でも触れた通り、僕自身は不動産業系でのデータ分析コンサルは結構やっており、思い入れの強い業界でもあります。で、不動産業におけるデータ活用については、他の製造業や小売業に比べると、「遅れている!」と言えるでしょう。これは不動産業界に限らないですが、日本のサービス業は、製造業や小売業に比べてデータ活用は遅れている傾向があり、特に、法律関連の書類が多い分野(不動産、工務店、自動車販売など)は紙ベースの仕事のやり方が定着しているため、ペーパーレスも進んでおらずデータ活用も遅れている印象です。とはいえ、不動産業界は比較的、独立や新規参入のしやすい業界でもあるので、そこで若い経営者を中心に不動産業のデータ活用やデータ分析の重要性がますます高まっているような印象です。
このような流れで、これまでの不動産取引は、経験や勘に頼ることが多かったんですが、近年ではデータをもとにした意思決定が求められるようになっています。特に、不動産ポータルサイトの普及や地価情報のオープンデータ化が進んだことで、価格推定や需要予測の精度が向上しています。AIや機械学習の導入により、過去の取引データやエリアごとの需要動向を分析し、適正価格の算出や売買タイミングの最適化が可能になっています。
また、ビッグデータの活用により、住宅ローンの審査や不動産投資のリスク評価も高度化しています。例えば、SNSの投稿や検索エンジンのトレンドデータを分析することで、特定エリアの人気度や将来的な地価上昇の可能性を予測する手法が注目されています。さらに、IoT技術の発展により、スマートホームやビル管理システムから収集されるデータが不動産の価値評価に活用されるケースも増えています。これにより、築年数や立地だけでなく、実際の建物の利用状況やエネルギー消費量など、より多角的な要素を考慮した評価が可能になっています。
このように、データ活用の重要性は不動産業界でますます高まっています。今回は僕なりの視点でデータ分析の応用例をお伝えしたいと思います!
グラフ化による分析例
では、まず初めにざっくりと不動産業界向けのデータ活用について、主にグラフ化・見える化の視点で紹介したいと思います。
物件ごとの成約率推移
各物件の成約率を時系列でプロットすると、特定の時期に成約率が急上昇するパターンが見られます。例えば、繁忙期である3〜4月や9〜10月に成約率が高まる傾向があります。この推移を分析することで、広告のタイミングやキャンペーンの最適化が可能になります。

エリア別の平均賃料推移
エリアごとの平均賃料を時系列で可視化すると、都市部では緩やかな上昇傾向、郊外では横ばいまたは下降傾向が見られることが多いです。新築マンションの供給やリモートワークの普及など、外的要因が価格に与える影響を把握するのに役立ちます。

内見回数と成約率の関係
内見回数と成約率を散布図で表すと、一般的には3~5回の内見で成約率がピークに達し、それ以上になると成約率が下がる傾向があります。内見回数が多すぎる場合、価格や条件が合わない可能性があるため、営業戦略の見直しが必要になります。

物件価格帯ごとの売却までの日数
価格帯ごとに売却までの日数を箱ひげ図で示すと、低価格帯の物件ほど売却が早く、高価格帯の物件ほど売却までの日数が長くなる傾向があります。特に1億円以上の物件は流動性が低いため、販売戦略を慎重に検討する必要があります。

駅距離と賃料の相関分析
駅からの距離と賃料を散布図でプロットすると、一般的に駅から離れるほど賃料は下がるものの、人気エリアでは距離があっても高賃料を維持する物件も見られます。この関係を分析することで、エリアごとの適正賃料を見極めることができます。

政府統計を活用したアパート入居率予測
これは、ある地方都市で建築リフォーム業と不動産業を営んでいる会社のデータ分析コンサルをした際の分析です。この会社は、全国規模でアパート一棟を買取り、リノベーションし、再販売するビジネスモデルに強みを持っている会社でした。この会社の課題は、「アパート一棟を買い取る際に、将来のアパートの入居率が高い物件をできるだけ購入したい」というものです。そこで僕が将来のアパートの入居率を予測することとなりました。ちなみにこの事例を当時の中小企業診断協会シンポジウムで発表し、優秀賞を受賞させていただきました(論文内容はこちら)。
予測に使うデータ・・・
国勢調査データや経済センサスデータといった政府の統計データ(年齢別、職業別、世帯構成別の人口や世帯数、業種や企業規模ごとの企業数など)
予測したいデータ・・・
国土交通省による土地建物統計データにある入居率データ
やりたいこと・・・
特徴量を用いて、4年後のアパートの入居率を求めたい。求めるエリア範囲は市区町村単位とする。
結果(抜粋)・・・
こんな感じで、将来の入居率の高いエリアを予測することができました。
例えば、「15歳未満人口の割合が13%よりも大きく、一般世帯アパート6〜10階建が152棟よりも大きい場合、そのアパートの4年後の入居率は70%を超えると予測できる」というものです。この結果から自信を持ってそのアパートの購入を検討できるようになりました!

ちなみに、ここで使った予測モデルは決定木という手法になります。手法の詳細な説明は以下にありますので、よかったら見てください。

まとめ
以上、不動産業界のデータ活用でした。最後は僕自身がコンサルとして携わった事例を紹介させていただきました。僕自身の感覚では、不動産業界全体ではIT化やデータ活用は遅れている印象ですが、先ほどの事例にもあるように若い経営者を中心に、強烈にIT化やデータサイエンスを進めている事業者もどんどん増えていっています。
このような流れで、おそらく不動産業界はITの進んだ会社と、そうでない会社が極端に二極化が進むのではないかと予想しています。特に不動産業界は紙ベースのビジネスが根強いですが、一旦データ化を進めればビッグデータをうまく活用できる業界でもあります。ぜひ、この機会に不動産ビジネスのデータ活用をすすめていただけると幸いです!